賃貸の瑕疵物件とは?瑕疵物件の種類をご紹介

賃貸の瑕疵物件とは?瑕疵物件の種類をご紹介

賃貸物件へのお引っ越しをご検討中の方のなかには、「瑕疵物件」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は瑕疵物件にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴が異なるため、契約前に内容を把握しておくことが重要です。
そこでこの記事では、賃貸物件における瑕疵物件の概要や、物理的瑕疵・心理的瑕疵の違いについて詳しくご紹介します。
賃貸物件をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸物件における瑕疵物件とは?

賃貸物件における瑕疵物件とは?

不動産における瑕疵とは、その物件が本来備えているべき品質や性能を欠いていることです。
瑕疵物件とは、何らかの欠陥を抱えた物件のことであり、「訳あり物件」とも呼ばれることもあります。
たとえば、建物の耐震性に問題がある、墓地や火葬場が近隣にある、物件で自殺や殺人事件が発生したなどが瑕疵物件に該当します。
瑕疵の内容は物件によって異なりますが、借主に悪影響を与える可能性がある点は共通です。
貸主には、瑕疵物件であることを告知する義務があります。瑕疵がある場合は、必ず借主にその旨を伝えなければなりません。
瑕疵があることを告知せずに契約を締結した場合、貸主は告知義務違反となり、契約不適合責任を負う可能性があります。
瑕疵物件であることを知らずに契約してしまうと、大きなトラブルに発展する可能性があるため、契約時には注意が必要です。

告知義務違反と契約不適合責任

前述のとおり、瑕疵物件を賃貸に出す場合、賃貸借契約を締結する際にその瑕疵の内容を借主に伝える必要があります。
貸主からすれば、賃貸物件に瑕疵があると家賃にも影響が出るため、瑕疵の存在を伝えたくない場合もあるかもしれません。
しかし、瑕疵は借主が物件を借りるかどうかを決定するうえで重要な要素となります。
そのため、借主を保護するために告知義務が設けられています。
貸主が告知義務を怠った場合、借主は契約不適合責任に基づく損害賠償請求が可能です。
実際に、自殺事故があったことを告げずに賃貸物件を契約したケースでは、借主が貸主に対しての損害賠償請求を裁判で認められた例もあります。

瑕疵物件の種類

瑕疵物件には、以下の4つの種類があります。

●物理的瑕疵
●心理的瑕疵
●環境的瑕疵
●法律的瑕疵


賃貸物件を契約する際、とくに注意すべき点は、物理的瑕疵と心理的瑕疵の2つです。
これらの瑕疵には、物件を見ただけでは判断できないものも多くありますので、契約時に十分に確認しましょう。
物理的瑕疵と心理的瑕疵についてはは、このあと詳しく見ていきましょう。
環境的瑕疵は、物件の周囲の環境が居住に適していないと考えられるケースを指します。
近隣に暴力団事務所や墓地、ガスタンクなどの嫌悪対象となる施設がある場合に該当します。
法律的瑕疵は、法令によって物件の仕様が制限されているケースのことです。
既存不適格建築物などがこれに該当しますが、賃貸物件の場合はそれほど気にする必要はありません。

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賃貸物件における物理的瑕疵物件

賃貸物件における物理的瑕疵物件

物理的瑕疵物件とは、賃貸物件の建物や、その建物が建っている土地に何らかの欠陥や問題がある物件のことです。
物理的瑕疵は建物の安全性やそこに住む方の健康にも関わるので、物理的瑕疵物件を借りる場合はその内容を理解したうえで契約するのが重要です。
見ればわかるものだけでなく、見ただけではわからない瑕疵もあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
以下では、賃貸物件の物理的瑕疵の例を、建物と土地のそれぞれについてご紹介します。

建物の物理的瑕疵は?

建物の物理的瑕疵には、以下のようなものがあります。

●耐震強度が不足している
●外壁にひび割れがある
●給配水管が故障している
●建材にアスベストが使用されている


とくに注意すべきは、一見したところではわからない瑕疵が多く存在する点です。
外壁に大きなひび割れがある場合は、内見の際に自身で確認することができます。
しかし、耐震強度の不足やアスベストの使用などは内見だけでは把握できません。
トラブルを防ぐためにも、契約書や重要事項説明書などでしっかりと確認しましょう。
なお、床にできた傷や摩耗など、普段の生活で発生した損傷は物理的瑕疵には該当しません。

土地の物理的瑕疵は?

土地の物理的瑕疵には、以下のようなものがあります。

●地盤沈下が発生している
●有害物質による土壌汚染が発生している


賃貸物件のなかでも、一戸建ての場合はとくに土地の物理的瑕疵に注意が必要です。
地盤沈下が発生し住宅が傾いている物件であれば、物理的瑕疵が内見の段階でも確認できます。
しかし、土地が有害物質で汚染されている場合などは、実際に土地を見ても瑕疵の有無を確認できません。
土地の物理的瑕疵の有無やその内容は、契約前に必ず確認しましょう。

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賃貸物件における心理的瑕疵物件

賃貸物件における心理的瑕疵物件

心理的瑕疵物件とは、物件に住むことに対して心理的に大きな影響を受ける瑕疵がある物件のことです。
具体的には、自殺や他殺、事件や事故のような、心理的に嫌忌されがちなことがらを指します。
以下では、心理的瑕疵物件について詳しく見ていきましょう。

心理的瑕疵には明確な基準がない

心理的瑕疵の特徴の1つが、明確な基準が設定されていないことです。
事件や事故をはじめとした物事の捉え方は人によって異なるため、瑕疵に該当するかどうかの判断が困難です。
しかし、明確な基準がない場合、事件性のない死まで告知する必要が生じます。
たとえば、自然死であっても告知が必要になります。
このため、リスクを避けたい賃貸物件のオーナーが高齢者の入居を断るケースが増え、高齢者の物件選びの選択肢が制限される可能性があります。
そのため、令和3年に国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公表されました。

告知義務が生じるケースと生じないケース

国土交通省が公表したガイドラインでは、告知義務が生じるケースと生じないケースを整理しています。
ガイドラインによれば、老衰や持病などの自然死や、入浴中の溺死など日常生活での不慮の死は原則として告知義務がありません。
ただし、自然死や日常生活での不慮の死であっても、発見が遅れたなどの理由で特殊清掃がおこなわれた場合は告知義務が生じるとしています。
また、自殺や事件による死など、自然死や不慮の死を除く死亡があった場合にも告知義務が生じます。
しかし、隣接する物件や入居者が普段使用しない共用部分などで発生した場合、告知義務が生じる死であっても告知の必要はありません。
心理的瑕疵があるのではないかと不安に感じたら、契約前に不動産会社に確認すると良いでしょう。

告知が必要な期間

国土交通省が公表したガイドラインによれば、告知義務が生じるケースでは、死の発覚から3年間は告知が必要です。
したがって、告知義務が生じるケースであっても、物件で死が発生してから3年以上経過すれば、告知は不要になります。
ただし、このガイドラインに記載されている内容は原則であり、個別に対応が必要なケースもあります。
たとえば、ニュースなどで大々的に取り上げられた事件があった物件では、3年という期間のみで区切るのではなく、個別の判断が求められるでしょう。

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まとめ

賃貸物件における瑕疵物件とは、何らかの欠陥を抱えた物件のことです。
物理的瑕疵や心理的瑕疵など4つの種類があり、瑕疵がある物件は借主にその旨を告知する義務があります。
入居後のトラブルを防ぐためにも、契約の際にしっかりと確認しておきましょう。